10月に、子供の本の関りによるその子の学力の変化について、
大きくな研究成果が2つ発表されました。
1つは、ベネッセによる発表で、
小学生の読書量と学力の関係についての報告です。
こちらは、日本国内のニュースで広く取り上げられていたので、
ご存知の方も多いでしょう。
もう1つは、英語論文による海外の研究成果で、
思春期における家庭内の本の数と、その子の能力についての報告です。
本というと、読み書きなど国語能力に結びつけがちですが、
この2つの報告のどちらからも示唆されていることは、
読書と算数・計算能力に関係がある
ということです。
かなり意外な結果ではないでしょうか。
それでは、この以外な研究結果も含めて、
それぞれの研究成果をざっくりと見ていきましょう。
小学生の読書と学力
まずはベネッセの研究で明らかになったことについて見ていきましょう。
もとの報告はこちらのPDFファイルで見ることができます。
調査方法
ご存知の通り、ベネッセでは小学生を対象に「チャレンジ」という
通信教育を提供しています。
この会員になると「まなびライブラリー」という電子書籍を
追加料金なしで読めるサービスを利用できます。
この研究では、「まなびライブラリー」の利用状況と、
「チャレンジ」の学力テストの結果を照らし合わせています。
具体的には、小学生5年生が1年間でどれだけ学力に変化があったかを、
その子の「まなびライブラリー」での読書量と比較しています。
結果
下のグラフは、5年生の時の学力テスト(事前)から、
6年生の時の学力テスト(事後)で、
どれだけ偏差値に変化があったかを科目別に示したものです。
※ 出展:小学生の読書に関する実態調査・研究
どの科目も、読書が無い、つまり「まなびライブラリー」を利用しなかった子供に比べて、
読書が多い子供の方が、偏差値が増加する傾向を見せています。
科目別に見てみると、その偏差値の変化の幅は、
「算数」が最も大きく、
読書に関係のありそうな「国語」では、変化が小さいことが分かります。
算数のテストのことを思い出してみると、
いわゆる「文章題」ほど配点が高く設定されているので、
文章を正しく理解して問題を解く能力が、
読書によって伸ばされたということかもしれません。
思春期における家庭内の本の数の能力
次は、海外の研究成果について見ていきましょう。
こちらは、いくつもの国を跨いで収集されたデータから分析されていて、
より大掛かりなものとなっています。
調査方法
この論文では、国際成人力調査(PIAAC)と呼ばれる
複数の国で16歳~65歳を対象として実施調査結果の分析を行っています。
ただし、論文中では、25歳~65歳までのデータを使って分析が行われています。
この調査では、
「読解力」「数的思考能力」「ITスキル」
の3つをテストによって図っています。
日本で行われたテストの例は下の文科省のページから見ることができます。
国際成人力調査(PIAAC:ピアック):文部科学省
また、テストの対象者には、
「16歳の時に家の中に本(雑誌、新聞、教科書を除く)が何冊あったか」という
質問に回答してもらっています。
これらのデータを使って、
家の中の本の数と、それぞれの能力テストの結果を分析しています。
結果
下のグラフは、
横軸に家の中の本の数、
縦軸に能力テストの成績を示しています。
左から、「読解力」「数的思考能力」「ITスキル」のテストの結果です。
いずれについても、本の数が増えるほど能力テストの結果が高くなっていることが分かります。
特に、本の数が100冊以下では、本の数が増えるにつれて、
急激に成績がよくなっています。
一方で、ある程度、本の数が多いと、それ以上増えても、
ほとんど変わらなくなる様子も見えます。
グラフから、本の数は300~400冊くらい置いておくのが、
収納スペース的にも、本の効果的にも良さそうですね。
まとめ
本と子供の学力・能力についての研究結果を見てきました。
子供が本を読むことで、
読解力が向上するというのは、
簡単に想像できますが、
算数やITなど、他の能力を高めることにもつながるのですね。
また、家に置いておく本の数は300~400ぐらいを目標とするのが良さそうです。